大学受験は、学力はもちろんのこと、当日のコンディションが合否を大きく左右する重要な局面です。そのコンディションを整える上で、意外と見落としがちなのが「服装」です。多くの受験生が「試験当日は制服で行くべきか、それとも私服がいいのか」「面接ではどんな格好がふさわしいのか」といった悩みを抱えています。
服装は、単なる見た目の問題ではありません。試験への集中力を維持し、最高のパフォーマンスを発揮するための「戦略的ツール」ともいえます。また、面接や総合型選抜などでは、第一印象を決定づける重要な要素にもなります。不適切な服装を選んでしまったがために、試験官に余計な疑念を抱かせたり、自分自身が試験に集中できなかったりする事態は、絶対に避けたいものです。
この記事では、大学受験における服装の基本ルールから、学力試験や面接といったシーン別の最適な服装、男女別の具体的なコーディネート例、そして避けるべきNGな服装まで、あらゆる疑問に答えます。さらに、服装以外の身だしなみや、持っていると安心なアイテムについても詳しく解説します。
この記事を最後まで読めば、服装に関するあらゆる不安が解消され、自信を持って試験当日に臨めるようになるでしょう。
目次
大学受験の服装の基本!制服と私服どっちを選ぶべき?
大学受験を控えた多くの高校生や浪人生が最初に悩むのが、「制服と私服、どちらを選ぶべきか」という問題です。結論から言うと、どちらを選んでも合否に直接的な影響はありません。しかし、状況や個人の立場によって最適な選択は異なります。ここでは、基本的な考え方と、それぞれの立場ごとのおすすめの服装について詳しく解説します。
基本的にはどちらを選んでも問題ない
まず大前提として、大学受験の服装は、制服でも私服でも、どちらを選んでも問題ありません。大学側が服装によって受験生を評価し、合否を決めることは、原則としてありません。大学が評価するのは、あくまで試験の成績や面接での受け答え、提出された書類の内容です。
実際に受験会場へ行くと、制服の受験生と私服の受験生が混在しているのが一般的です。特に、大規模な会場で行われる共通テストや一般選抜では、その割合は半々程度か、むしろリラックスできる私服を選ぶ受験生の方が多い傾向にあります。
大切なのは、「自分が最も集中でき、リラックスして試験に臨める服装は何か」という視点です。制服を着慣れていて、気持ちが引き締まるという人もいれば、普段から着慣れた私服の方が落ち着くという人もいます。どちらの選択も間違いではありませんので、まずは安心して自分の状況に合った服装を検討しましょう。
ただし、これはあくまで「学力試験」における話です。面接や総合型選抜など、人物評価が重視される試験においては、少し事情が異なります。この点については後の章で詳しく解説しますが、TPO(時・場所・場合)をわきまえるという基本的なマナーは常に意識しておく必要があります。
判断に迷うなら制服が最も無難
「どちらでも良いと言われても、やはり迷ってしまう」という受験生は多いでしょう。もし判断に迷うのであれば、現役の高校生は「制服」を選ぶのが最も無難で確実な選択です。
制服を選ぶことには、以下のような多くのメリットがあります。
- 服装選びに悩む時間と労力を削減できる
受験直前期は、1分1秒が貴重です。服装に悩む時間があるなら、その時間を英単語の一つでも覚える時間に充てたいと考えるのが自然でしょう。制服であれば、朝起きて着るものが決まっているため、服装選びに頭を悩ませる必要が一切ありません。これは精神的な負担を軽減する上で、非常に大きなメリットです。 - フォーマルな印象を与え、悪目立ちしない
制服は学生にとっての「正装」です。そのため、どんな試験会場でも浮くことはありません。特に、面接試験などでは、きちんと着こなされた制服は清潔感と誠実な印象を与えます。私服選びに自信がない場合、下手に個性を出そうとして失敗するリスクを避けることができます。 - 「受験生」としての自覚が芽生え、気持ちが引き締まる
普段から着慣れた制服を着用することで、「自分はこれから大事な試験に臨むんだ」という意識が高まり、自然と気持ちが引き締まります。適度な緊張感は、集中力を高める上でプラスに働くことがあります。 - 周囲の目が気にならない
受験会場には様々な服装の受験生がいます。私服の場合、「自分の服装は場違いではないか」「周りからどう見られているか」といった不安がよぎることがあるかもしれません。その点、制服であれば大多数の現役生と同じ格好なので、余計な心配をせずに試験に集中できます。
このように、制服は多くのメリットを持つ「失敗のない選択肢」です。特に、服装選びに時間をかけたくない人や、周囲の目を気にせず試験に集中したい人にとっては、最適な選択といえるでしょう。
浪人生・既卒生は落ち着いた私服がおすすめ
現役生とは対照的に、高校を卒業している浪人生や既卒生の場合は、制服の着用は避け、「落ち着いた印象の私服」を選ぶのが一般的であり、推奨されます。
浪人生が母校の制服を着て受験会場に行くこと自体は、ルール上問題ありません。しかし、周囲の現役生とは年齢が異なるため、制服姿が浮いてしまい、かえって目立ってしまう可能性があります。また、自分自身も周囲の視線を過剰に意識してしまい、試験に集中できなくなる恐れがあります。
浪人生・既卒生が目指すべきは、「悪目立ちせず、かつ信頼感や落ち着きを感じさせる服装」です。具体的には、以下のようなオフィスカジュアルに近いスタイルがおすすめです。
- トップス: 無地のシャツ、ブラウス、ニット、ポロシャツなど。色は白、黒、紺、グレー、ベージュといったベーシックカラーが基本です。
- ボトムス: チノパン、スラックス、きれいめのロングスカートなど。ジーンズやカーゴパンツのようなカジュアルすぎるアイテムは避けましょう。
- アウター: ジャケット、カーディガン、きれいめのコートなど。温度調節がしやすく、かつフォーマルな印象を与えられるものを選びます。
ポイントは、「清潔感」と「シンプルさ」です。派手な色や柄、奇抜なデザインのものは避け、あくまで試験を受けるにふさわしい、品のある服装を心がけましょう。予備校に通っている場合は、普段の予備校での服装を参考にしつつ、それよりも少しだけきちんとした印象を意識すると、ちょうど良いバランスになります。
事前に大学からの指示を確認しよう
制服か私服か、どのような服装を選ぶかに関わらず、最も重要なことは「大学の募集要項や受験票の注意書きを事前に必ず確認する」ことです。
ほとんどの大学では服装に関する厳格な規定はありませんが、ごく稀に、特定の学部(例:芸術系の実技試験など)や試験形式において、服装に関する指示や注意事項が記載されている場合があります。例えば、「実技試験のため動きやすい服装で来てください」「特定の色の服は避けてください」といった指示です。
これらの指示を見落としてしまうと、当日になって慌てたり、場合によっては試験官から注意を受けたりする可能性もゼロではありません。特に、オンラインでの面接試験が増えている昨今では、背景や服装について特別な指示が出されることもあります。
募集要項や受験票は、手元に届いたらすぐに隅々まで目を通す習慣をつけましょう。服装に関する記載がないか、以下の項目を重点的にチェックします。
- 受験上の注意
- 試験当日の持ち物
- 面接・実技試験に関する連絡事項
これらの公式な指示が、他のどんな情報よりも優先されます。「友人や先輩がこう言っていたから」という情報だけで判断せず、必ず一次情報である大学からの公式な発表を確認することが、安心して受験に臨むための第一歩です。
【シーン別】大学受験に最適な服装の選び方
大学受験と一言でいっても、その内容は様々です。長時間にわたって学力を問われる「学力試験」と、第一印象や人間性が評価される「面接・小論文」では、求められる服装のポイントが大きく異なります。ここでは、それぞれのシーンに最適な服装の選び方を具体的に解説します。
学力試験(共通テスト・一般選抜)の場合
共通テストや各大学の一般選抜といった学力試験では、評価の対象はあくまで答案用紙に書かれた内容です。そのため、服装で評価が左右されることはありません。このシーンで最も優先すべきなのは、「長時間座っていても疲れず、最大限に集中力を維持できること」です。
集中力を妨げないリラックスできる服装
学力試験は、1科目あたり60分から90分、長いものでは120分に及び、それが一日に数科目続く長丁場です。慣れない服装や窮屈な服装では、体が疲れてしまい、思考力が低下する原因になります。
そこでおすすめなのが、普段から着慣れている、リラックスできる服装です。具体的には、以下のようなアイテムが挙げられます。
- スウェットやジャージ素材の服: 伸縮性があり、体を締め付けないため、長時間座っていても快適です。ただし、あまりにも部屋着感の強いヨレヨレのものではなく、清潔感のあるきれいめなデザインのものを選びましょう。
- 着心地の良いコットン素材のTシャツやカットソー: 肌触りが良く、吸湿性にも優れています。
- ウエストがゴム仕様のパンツ: ベルトで締め付ける必要がなく、お腹周りが楽になります。
逆に、新品の硬いシャツや、体にフィットしすぎるジーンズなどは避けるのが賢明です。着慣れない服は、無意識のうちに体にストレスを与え、集中力を削いでしまいます。試験当日は、学力以外のことで余計なエネルギーを使わないことが何よりも重要です。
着脱しやすい上着で体温調節をする
学力試験における服装選びで、リラックスできることと同じくらい重要なのが「体温調節のしやすさ」です。
大学の試験会場は、広い講義室やホールが使われることが多く、空調の効き具合は場所によって大きく異なります。「暖房が効きすぎて暑い」「窓際で隙間風が入り寒い」など、会場の室温は自分ではコントロールできません。
暑すぎても寒すぎても、集中力は著しく低下します。この問題を解決するために、カーディガン、パーカー、ジップアップ式のフリースなど、着脱しやすい上着を必ず一枚用意していきましょう。
- 基本の服装: 薄手の長袖シャツやカットソー
- 寒い場合: 上からカーディガンやパーカーを羽織る
- 暑い場合: 上着を脱いで薄着になる
このように、重ね着(レイヤリング)を前提とした服装を準備しておくことで、どんな室温の会場でも快適な状態を保ち、試験に集中できます。上着を選ぶ際は、脱ぎ着するときにガサガサと大きな音が出ない素材(フリースやニットなど)を選ぶと、周りの受験生への配慮にもなります。
面接・小論文・総合型選抜(旧AO入試)の場合
学力試験とは対照的に、面接、小論文、総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜などでは、学力だけでなく受験生の人間性や意欲、思考力などが総合的に評価されます。特に面接では、入室した瞬間の「第一印象」が非常に重要になります。
このシーンでの服装のキーワードは、「清潔感」「誠実さ」「知性」です。面接官に「この学生になら、うちの大学で学んでほしい」と思わせるような、信頼感のある服装を心がける必要があります。
清潔感を第一に考える
面接官は、服装のブランドや価格を見ているわけではありません。見ているのは、「TPOをわきまえた、清潔感のある身だしなみができる人物か」という点です。どんなに素晴らしい受け答えを準備していても、服装がだらしなければ、その内容が正しく伝わらない可能性があります。
具体的には、以下の点に注意しましょう。
- シワや汚れがないか: シャツやブレザーには必ずアイロンをかけ、ズボンやスカートの折り目もきれいにつけておきましょう。靴の汚れも忘れずにチェックします。
- サイズ感は合っているか: 大きすぎたり小さすぎたりする服は、だらしない印象を与えます。自分の体型に合った、ジャストサイズの服を選びましょう。
- ほつれや毛玉がないか: 細かい部分ですが、意外と目につきます。事前に確認し、処理しておきましょう。
これらの基本的な身だしなみを整えるだけで、真面目で誠実な人柄をアピールできます。
現役生は制服が基本
面接や総合型選抜において、現役の高校生が最も自信を持って着られる服装は、やはり「制服」です。制服は学生の正装であり、面接というフォーマルな場に最もふさわしい服装と言えます。
ただし、ただ制服を着れば良いというわけではありません。「着こなし」が重要です。
- シャツのボタンは一番上まで留める
- ネクタイやリボンは緩めず、きちんと締める
- スカート丈は短すぎないようにする(膝が隠れる程度が目安)
- ブレザーのボタンはきちんと留める(着席時は外しても良い)
- ズボンを腰で履くなど、着崩さない
普段、学校で少し着崩している人も、面接の日は校則に則った正しい着こなしを徹底しましょう。きちんと着こなされた制服は、受験生の真面目さや規律を守る姿勢を雄弁に物語ります。
私服の場合はスーツやオフィスカジュアルを選ぶ
浪人生や既卒生、あるいは制服のない高校に通う現役生が面接に臨む場合は、私服を選ぶことになります。その際の基本は、「スーツ」または「オフィスカジュアル」です。
- スーツ: 最もフォーマルで間違いのない選択です。リクルートスーツのようなものでなくても、手持ちの落ち着いた色(黒、紺、ダークグレーなど)のスーツで問題ありません。インナーには白いシャツやブラウスを合わせるのが基本です。浪人生がスーツを着用すると、現役生にはない落ち着きや大人びた印象を与えることができます。
- オフィスカジュアル: スーツを持っていない場合や、大学の雰囲気が比較的自由な場合は、オフィスカジュアルでも問題ありません。これは、「ビジネスシーンで着用しても失礼にあたらない、上品で清潔感のある服装」を指します。
- 男性: ジャケット(ブレザー)+襟付きシャツ+スラックス or チノパン
- 女性: ジャケット or カーディガン+ブラウス or きれいめなカットソー+スカート or パンツ
いずれの場合も、色は黒、紺、グレー、白、ベージュといったベーシックカラーでまとめるのが鉄則です。派手な色や柄物は避け、シンプルで品のあるコーディネートを心がけましょう。服装は、面接官に「自分は真剣にこの面接に臨んでいます」というメッセージを伝えるための非言語コミュニケーションであることを忘れないでください。
【男女別】服装選びのポイントと具体例
ここでは、これまでのポイントを踏まえ、男女別に服装選びの具体的なポイントとコーディネート例を、表を交えながら詳しく解説します。実際に何を着ていけば良いかイメージを掴むための参考にしてください。
シーン | 男子の推奨服装 | 女子の推奨服装 | ポイント |
---|---|---|---|
学力試験 | ・スウェット、パーカー ・チノパン、ジャージ ・Tシャツ、カットソー |
・カーディガン、パーカー ・ブラウス、カットソー ・ウエストがゴムのパンツやスカート |
【共通】 ・体を締め付けないリラックスできる素材 ・着脱しやすい上着で温度調節 ・着慣れた服を選ぶ |
面接・小論文 | ・制服(現役生) ・スーツ(紺・グレーなど) ・ジャケット+シャツ+スラックス |
・制服(現役生) ・スーツ(紺・グレーなど) ・ジャケット+ブラウス+スカート/パンツ |
【共通】 ・清潔感を最優先 ・ベーシックカラーでまとめる ・自分の体に合ったサイズを選ぶ |
男子の服装のポイント
男子の服装で重要なのは、「清潔感」と「誠実さ」が伝わることです。だらしなく見えず、爽やかで真面目な印象を与えることを目指しましょう。
【学力試験の場合】
学力試験では機能性を最優先します。前述の通り、スウェットやジャージ素材のものが快適です。ただし、あまりにラフすぎると気持ちが緩んでしまうこともあるため、予備校の自習室に行くような、少しだけきちんとしたカジュアルウェアをイメージすると良いでしょう。
- 具体例1: 無地のスウェットシャツ + チノパン + スニーカー
- 具体例2: ジップアップパーカー + 長袖Tシャツ + ストレッチの効いたパンツ
【面接・小論文の場合】
現役生は、校則通りにきちんと着こなした制服がベストです。ブレザーのボタンを留め、ネクタイを締め、シャツの裾はズボンの中に入れましょう。髪型も整え、清潔感を演出します。
私服の場合は、スーツまたはジャケットスタイルが基本です。
- スーツスタイル:
- スーツ: 紺またはチャコールグレーの無地のスーツ。黒でも問題ありませんが、リクルート感が強すぎる場合は紺やグレーの方が柔らかい印象になります。
- シャツ: 白無地のレギュラーカラーかワイドカラーのワイシャツ。必ずアイロンをかけてシワのない状態に。
- ネクタイ: 派手すぎない色・柄のもの。紺、エンジ、グレーなどをベースにしたストライプや小紋柄が無難です。
- 靴: 黒か茶色の革靴。スニーカーはNGです。事前に磨いておきましょう。
- 靴下: 黒か紺の無地のもの。座った時に素肌が見えない長さのものを選びます。
- ジャケットスタイル(オフィスカジュアル):
- ジャケット: 紺やグレーのブレザー。
- シャツ: 白やサックスブルーの襟付きシャツ。
- パンツ: グレーのスラックスや、黒・ベージュのチノパン。ジーンズは避けましょう。
- 靴・靴下: スーツスタイルと同様です。
シャツの襟元や袖口の汚れは意外と目立ちます。 前日までに必ずチェックし、清潔なものを着用するように心がけてください。
女子の服装のポイント
女子の服装で目指すべきは、「清潔感」と「知的で品のある印象」です。華美になりすぎず、落ち着いた雰囲気を演出することが大切です。
【学力試験の場合】
男子同様、機能性を重視します。特に女子は冷え性の人も多いため、温度調節がより重要になります。ブランケットやひざ掛けの持ち込みが許可されている場合もありますが、許可されていない場合に備え、服装で調整できるようにしておきましょう。
- 具体例1: ゆったりしたニット + 裏起毛のパンツ + 厚手の靴下
- 具体例2: 長袖カットソー + ロングカーディガン + ウエストがゴムのロングスカート
体を締め付ける下着や、ストッキングなども長時間の着用では負担になることがあるため、できるだけリラックスできるものを選びましょう。
【面接・小論文の場合】
現役生は、清潔に着こなした制服が最も好印象です。リボンやネクタイを正しくつけ、スカート丈は膝にかかるくらいが理想的です。短すぎるスカートは品位を欠いた印象を与えるため、必ず長さを確認しましょう。
私服の場合は、スーツまたはジャケットスタイルが基本となります。
- スーツスタイル:
- スーツ: 紺、グレー、黒、ベージュなどの落ち着いた色。パンツスーツでもスカートスーツでも、どちらでも構いません。
- インナー: 白や淡い色のブラウス、またはシンプルなカットソー。胸元が開きすぎないデザインを選びます。フリルが多すぎるなど、華美なデザインは避けましょう。
- ストッキング: ナチュラルなベージュのストッキングを着用するのがマナーです。伝線した時のために、予備をカバンに入れておくと安心です。
- 靴: 黒やベージュのシンプルなパンプス。ヒールは高すぎない3〜5cm程度のものを選び、歩きやすいものにしましょう。ピンヒールやウェッジソールは避けます。
- ジャケットスタイル(オフィスカジュアル):
- ジャケットまたはカーディガン: 紺、グレー、ベージュなどのベーシックカラーのジャケットか、きれいめのカーディガン。
- トップス: 白やパステルカラーのブラウスやカットソー。
- ボトムス: 膝丈から膝下丈のスカート(フレア、タイトなど)や、きれいめのパンツ(テーパード、ストレートなど)。
- ストッキング・靴: スーツスタイルと同様です。
アクセサリーは基本的に着けないのが無難です。 着けるとしても、小ぶりで目立たないものに留めましょう。髪が長い場合は、後ろで一つに束ねるなどして、顔がはっきりと見えるようにすると、明るく快活な印象を与えられます。
これは避けたい!大学受験でのNGな服装
ここまで推奨される服装について解説してきましたが、逆に「これは絶対に避けるべき」というNGな服装も存在します。知らずに着用してしまうと、試験官に悪い印象を与えたり、最悪の場合カンニングを疑われたりする可能性もあります。ここでは、そうしたNGな服装を具体的に解説します。
カンニングを疑われる可能性がある服装
受験において最も避けなければならないのが、カンニングを疑われる行為です。たとえそのつもりがなくても、服装が原因で疑いの目を向けられてしまっては、動揺して試験に集中できなくなります。大学入試センターの「受験上の注意」でも、服装に関する注意喚起がなされています。(参照:大学入試センター公式サイト)
英字・漢字・地図などがプリントされた服
Tシャツやパーカーなどにプリントされた英単語、格言、ことわざ、歴史上の人物の言葉などは、カンニングの材料になり得ると判断される可能性があります。
例えば、英文がプリントされたTシャツを着て英語の試験を受ければ、その内容が問題に関係なくても、試験官は注意を払わざるを得ません。注意されたり、服を裏返して着るよう指示されたりすれば、その時点で平常心を失ってしまうでしょう。
同様に、世界地図や日本地図、都市の路線図などがデザインされた服も避けるべきです。地理の試験でなくても、あらゆる科目の問題文に地名が登場する可能性はあります。要するに、何らかの「情報」が記載されていると解釈されかねないデザインの服は、すべて避けるのが賢明です。 試験当日は、無地の服を選ぶのが最も安全です。
数式や年号が書かれた服
理系科目の数式や公式、物理法則、化学式、あるいは歴史の年号や元素記号などがデザインとしてあしらわれている服も、当然ながらNGです。これらはカンニング行為に直結すると見なされても文句は言えません。
「デザインだから大丈夫だろう」という安易な考えは捨てましょう。試験官は、すべての受験生に対して公平性を保つ義務があります。少しでも疑わしい要素があれば、確認・注意せざるを得ないのです。自分自身を守るためにも、文字や記号、地図などが一切入っていないシンプルな服装を選びましょう。
試験の妨げになる服装
カンニングの疑い以外にも、自分自身や周囲の受験生の集中を妨げる服装も避けるべきです。静寂な試験会場では、些細なことが大きなストレスになり得ます。
音が出る素材やアクセサリー
ナイロン製のシャカシャカとしたウインドブレーカーや、歩くたびにカチャカチャと音が鳴る金属製のアクセサリー、ジャラジャラと飾りがついた服などは、試験会場にふさわしくありません。
試験中は、ペンを走らせる音やページをめくる音だけが響く、非常に静かな空間です。その中で、体を動かすたびに衣擦れの音が大きく響けば、自分だけでなく、周りの受験生の集中力を削いでしまいます。
また、ブレスレットやネックレス、大ぶりのピアスやイヤリングなども、机に当たって音を立てる原因になります。面接時ならまだしも、学力試験の際には外しておくのがマナーであり、自分のためでもあります。服装選びの際には、「この服は動いた時に音が出ないか?」という視点でもチェックしましょう。
締め付けが強い服や着慣れない服
デザイン性を重視したタイトな服や、体を締め付けるスキニージーンズ、硬い素材の新品の服などは、長時間の試験では大きな負担になります。血行が悪くなって体が凝ったり、お腹が苦しくなったりしては、問題に集中できません。
また、面接のために新調した着慣れないスーツやパンプスも注意が必要です。特に靴は、サイズが合っていないと靴擦れを起こし、歩くのも辛くなります。試験で使う服や靴は、必ず事前に一度着用してみて、着心地や歩きやすさを確認しておく「予行演習」が不可欠です。
TPOに合わない派手な服装
学力試験では服装は評価されないと述べましたが、それでも最低限のTPOはわきまえるべきです。特に面接では、派手な服装は致命的なマイナス評価に繋がりかねません。
派手な色やデザインの服
赤や黄色、ショッキングピンクといった原色系の服や、アニマル柄、奇抜なグラフィックが描かれた服などは、試験という厳粛な場には不適切です。これらの服装は、「常識がない」「真剣味に欠ける」といったネガティブな印象を面接官に与えてしまいます。
服装は、あくまで自分自身を良く見せるための引き立て役です。服自体が主張しすぎて、本人の印象が霞んでしまっては本末転倒です。黒、紺、グレー、白、ベージュといったベーシックカラーを中心に、シンプルでクリーンなスタイルを心がけましょう。
露出の多い服
胸元が大きく開いたトップス、丈の短いミニスカート、肩が出るオフショルダー、ダメージジーンズなどは、TPO違反の最たる例です。 これらは学力試験、面接のいずれのシーンにおいても絶対に避けるべき服装です。
こうした服装は、品位を欠くだけでなく、学習や研究の場である大学の雰囲気にそぐわないと判断されます。面接官に「この受験生は、大学生活を送る上での規範意識が低いのではないか」という懸念を抱かせてしまいます。
清潔感と誠実さをアピールするためにも、肌の露出は最小限に抑え、品格のある服装を選びましょう。
服装以外の身だしなみで注意すべきこと
大学受験では、服装だけでなく、髪型やメイク、爪の手入れといったトータルでの「身だしなみ」が評価の対象となります。特に面接では、細部まで見られている意識を持つことが大切です。ここでは、服装以外で注意すべき身だしなみについて解説します。
髪型・髪色
髪型と髪色で最も重要なのは「清潔感」です。 試験官や面接官に爽やかで真面目な印象を与えることを第一に考えましょう。
- 髪型:
- 前髪: 目にかからない長さに切るか、ピンで留めたりワックスで分けたりして、表情がはっきりと見えるようにしましょう。前髪が顔にかかっていると、暗く、自信がなさそうな印象を与えてしまいます。
- 長さ: 長い髪は、後ろで一つに束ねるのが基本です。お辞儀をしたときに髪が顔にかからないように、ポニーテールやお団子などですっきりとまとめましょう。ハーフアップも上品な印象ですが、サイドの髪が落ちてこないようにしっかりと固定することが大切です。
- スタイリング: 寝癖は必ず直しましょう。ワックスやスプレーを使いすぎたテカテカ・ガチガチの髪型は不自然なので、あくまでナチュラルなスタイリングを心がけます。
- 髪色:
- 基本は地毛の色(黒髪)が無難です。 明るすぎる茶髪や金髪、メッシュ、インナーカラーといった派手な髪色は、多くの大学の面接では好まれません。「真面目に学業に取り組む姿勢があるのか」と疑問を持たれる可能性があります。
- もし髪を染めている場合は、受験シーズンだけでも地毛に近い暗めの色に戻すことを強くおすすめします。それが難しい場合でも、少なくとも面接の前には、落ち着いた色合いに染め直すのが賢明です。
髪型は、その人の第一印象を大きく左右します。 顔周りをすっきりとさせ、清潔感を意識するだけで、聡明で明るいイメージを演出できます。
メイク
女子受験生にとって、メイクをどの程度すべきかは悩ましい問題です。結論から言うと、「ナチュラルメイク」か「ノーメイク」が基本です。
大学受験の面接は、おしゃれをアピールする場ではありません。あくまで評価されるのは、本人の資質や意欲です。派手なメイクは「TPOをわきまえていない」「学業よりも外見を重視している」というマイナスの印象を与えかねません。
もしメイクをする場合は、以下のポイントを意識した「清潔感のあるナチュラルメイク」に留めましょう。
- ベースメイク: ファンデーションは厚塗りせず、BBクリームやフェイスパウダーで肌の色ムラを整える程度にします。クマやニキビ跡が気になる場合は、コンシーラーで部分的にカバーしましょう。
- アイメイク: 濃いアイシャドウや、太く跳ね上げたアイライン、ボリュームタイプのマスカラはNGです。肌なじみの良いベージュやブラウン系のアイシャドウを薄く塗る程度に。アイラインも、まつ毛の隙間を埋める程度のごく細いものにしましょう。
- チーク・リップ: 血色を良く見せる程度に、薄く自然な色(コーラルピンクやベージュ系)を選びます。ラメやパールの強いもの、真っ赤な口紅は避けましょう。
- カラコン・つけまつげ: これらは明らかに不自然な印象を与えるため、絶対に使用してはいけません。
普段メイクをしない人が、面接のために無理に慣れないメイクをする必要は全くありません。 むしろ、ノーメイクの方がフレッシュで誠実な印象を与えることもあります。大切なのは、健康的に見えることです。前日はしっかり睡眠をとり、肌のコンディションを整えておきましょう。
爪やヒゲの手入れ
爪やヒゲといった細部も、清潔感を左右する重要なポイントです。 面接官は意外と手元を見ています。
- 爪:
- 男女ともに、爪は短く切り、清潔に保ちましょう。爪の間に汚れが溜まっていないか確認します。
- 女子生徒の場合、ネイルアートや派手な色のマニキュアは厳禁です。何も塗らないか、塗るとしても透明か薄いピンクのトップコート程度に留めましょう。長い爪もだらしない印象を与えるため、短く整えておきます。
- ヒゲ:
- 男子生徒の場合、ヒゲはきれいに剃っていくのが基本です。無精髭は不潔な印象や、だらしない印象を与えてしまいます。
- たとえ普段ヒゲを伸ばしている人でも、面接の日は剃っていくのが無難です。受験というフォーマルな場では、清潔感が何よりも優先されます。
これらの手入れは、前日の夜か当日の朝に行いましょう。細部にまで気を配れる人物であるというアピールにも繋がり、自信を持って面接に臨むことができます。
あると安心!受験当日の持ち物リスト
試験当日は、受験票や筆記用具といった必須アイテムの他に、服装に関連していくつか持っていると安心なものがあります。万全の態勢で試験に集中できるよう、以下の持ち物も準備しておくことをおすすめします。
腕時計(スマートウォッチは不可)
試験会場では、時計代わりにスマートフォンを使用することは固く禁じられています。 時間配分は合否を分ける重要な要素であり、腕時計は必須アイテムです。
しかし、どんな腕時計でも良いわけではありません。Apple Watchに代表されるスマートウォッチや、翻訳機能、計算機能などがついた多機能な時計は、ウェアラブル端末と見なされ、使用が禁止されています。 これを机の上に出していると、不正行為と見なされる可能性があります。
最も安全で推奨されるのは、時刻表示のみのシンプルなアナログ式またはデジタル式の腕時計です。 アラーム機能なども、誤って鳴ってしまうと他の受験生の迷惑になるため、事前に必ずオフにしておきましょう。電池切れの心配がないか、前日までに確認しておくことも忘れずに。
温度調節用のアイテム(カーディガン、カイロなど)
前述の通り、試験会場の温度は予測できません。服装で調整するのが基本ですが、それに加えていくつかのアイテムがあるとさらに安心です。
- カーディガンやパーカー: 重ね着の基本アイテム。脱ぎ着しやすく、かさばらないものを選びましょう。
- カイロ: 特に手足が冷えやすい人には必需品です。貼るタイプと貼らないタイプの両方があると、状況に応じて使い分けられて便利です。
- ブランケット・ひざ掛け: 持ち込みが許可されているか、事前に大学の募集要項などで確認が必要です。許可されていれば、足元の冷え対策に非常に有効です。ただし、英字や地図などがプリントされたものは避け、無地のものを持参しましょう。
- 薄手のストールやマフラー: 首元を温めるだけで体感温度はかなり変わります。
これらのアイテムを駆使して、常に自分が快適だと感じる体温をキープすることが、集中力維持の鍵です。
カバン
受験当日のカバンは、以下のポイントで選ぶのがおすすめです。
- A4サイズが入る大きさ: 受験票や大学の資料など、A4サイズの書類を折り曲げずに入れられる大きさが便利です。
- 床に置いても自立するもの: 試験会場では、カバンを足元に置くことがほとんどです。倒れにくい自立式のカバンだと、中身が散らばる心配がなく、スマートです。
- リュックサックまたはトートバッグ: 両手が空くリュックサックは移動時に便利です。面接がある場合は、よりフォーマルな印象のトートバッグも良いでしょう。
派手なブランドロゴが大きく入ったものや、奇抜なデザインのものは避け、服装と同様にシンプルで落ち着いたものを選ぶのが無難です。
予備のマスク
現在ではマスクの着用は個人の判断に委ねられることが多くなりましたが、感染症対策や、乾燥した会場での喉の保護のために持参すると安心です。
試験中に汚してしまったり、食事の際に外して失くしてしまったり、ゴム紐が切れてしまったりといった不測の事態に備え、予備のマスクを2〜3枚カバンに入れておきましょう。 無地の白や薄い色のものが、どんな服装にも合って無難です。
靴・靴下
服装の一部として、靴や靴下も重要です。
- 靴:
- 履き慣れた靴が絶対条件です。 新品の靴は靴擦れの原因になります。
- 学力試験の日は、歩きやすいスニーカーが最適です。
- 面接の日は、前述の通り男性は革靴、女性はパンプスが基本ですが、これも必ず事前に履いて慣らしておきましょう。試験会場までスニーカーで行き、直前で履き替えるという方法も有効です。
- 汚れがないか、事前に確認して磨いておきます。
- 靴下:
- 意外と見落としがちですが、派手な柄物やキャラクターものの靴下は避けましょう。
- 無地の黒、紺、白、グレーなどが基本です。
- 面接などで椅子に座った際に、ズボンの裾から素肌が見えない、十分な長さのものを選びましょう。
【番外編】保護者の付き添いの服装は?
受験生本人だけでなく、会場への付き添いや、面接の控え室で待機する保護者の服装も気になるところです。保護者の服装が直接合否に関わることはありませんが、大学関係者の目に触れる可能性はあります。
スーツかきれいめのカジュアルが無難
保護者の服装の基本は、「悪目立ちしない、品のある服装」です。 主役はあくまで受験生本人であり、保護者はそのサポート役です。派手な服装や、ラフすぎる服装は避けましょう。
- スーツ・セットアップ: 最も無難でフォーマルな選択です。特に面接の付き添いの場合は、スーツやジャケットを着用すると良いでしょう。色は紺やグレー、ベージュなどがおすすめです。
- きれいめのカジュアル(オフィスカジュアル): 学力試験の日の付き添いであれば、スーツほど堅苦しくなくても問題ありません。ブラウスにカーディガンとスカート、ポロシャツにジャケットとチノパンといった、上品で清潔感のあるカジュアルスタイルが適しています。
ジーンズにTシャツ、スウェットといったラフすぎる格好や、華美なアクセサリー、強い香水などは避けましょう。「子供の教育にしっかりとした考えを持っている、常識的な保護者」という印象を与えられるような、控えめで品格のある服装を心がけることが大切です。
大学受験の服装に関するよくある質問
最後に、大学受験の服装に関して、受験生や保護者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
試験会場で着替える場所はありますか?
基本的に、受験生のための更衣室や着替える場所は用意されていないと考えた方が良いでしょう。
大学によっては空き教室などを一時的に開放してくれる可能性もゼロではありませんが、それを期待するのは危険です。特に、何千人もの受験生が集まる大規模な会場では、個別の対応は困難です。
したがって、試験に適した服装は、自宅から着ていくのが原則です。 もし、どうしても会場近くで着替えたい場合は、駅の多目的トイレなどを利用することになりますが、当日は混雑が予想されるため、時間に十分な余裕を持つ必要があります。移動時の服装と試験時の服装を変えたい場合は、上着を一枚羽織ったり脱いだりする程度で調整できるようなコーディネートにしておくのが現実的です。
社会人受験生の場合はどのような服装が良いですか?
社会人経験を経て大学受験に臨む場合、服装は「ビジネススーツ」が最も適切で無難な選択です。
学生とは立場が異なるため、リクルートスーツのようなフレッシュさよりも、社会人としての経験や落ち着きを感じさせる服装が好まれます。普段、仕事で着用しているビジネススーツ(紺、チャコールグレーなど)に、清潔なワイシャツ、派手すぎないネクタイを合わせれば問題ありません。女性の場合も同様に、ビジネス用のパンツスーツやスカートスーツが良いでしょう。
学力試験の日も、あまりにラフな格好よりは、オフィスカジュアル程度の服装の方が、気持ちを切り替えやすいかもしれません。大切なのは、「学び直しへの真剣な意欲」が伝わる、清潔感と品格のある服装を心がけることです。